カート道での救済は、「完全な救済のニアレストポイント」を決めて、そこから1クラブレングス以内にドロップするだけです。罰打はありません。
迷いやすいのは「どこが基準点か」の一点に尽きます。ボールの位置ではなく、クラブが振れてスタンスも道から外れる最も近い1点が基準になります。
この記事では、実際のラウンドで3分以内に処置を終えられる手順を、測定方法・つまずきポイント・罰打になるケースまで具体的にお伝えします。
カート道の救済は無罰。ただし「ニアレストポイントの決め方」を間違えると、誤所からのプレーで2罰打になります。
結論:カート道の救済は5ステップで完了します
カート道の救済は「基準点を決める→1クラブレングスを測る→その範囲にドロップする」の3工程、実務では5ステップで完了します。罰打はゼロです。
手順の全体像は次のとおりです。
- 救済が受けられるか確認する(球が道上にある、またはスタンス・スイング区域が道にかかっている)
- 完全な救済のニアレストポイントを決める(元の球の位置に最も近く、ホールに近づかない、障害が完全に無くなる点)
- その点にティーなどでマークする
- そこから1クラブレングス以内・ホールに近づかない範囲を救済エリアとする
- 膝の高さから救済エリア内にドロップし、エリア内に止まればプレー
所要時間は慣れれば1分弱です。同伴者を待たせないよう、順番が来る前に基準点の見当をつけておくとスムーズに進みます。
ゴルフ規則では、カート道は「異常なコース状態」のうちの「動かせない障害物」に該当し、規則16.1で無罰の救済が認められています(日本ゴルフ協会 ゴルフ規則2023年版)。
そもそもカート道の救済とは?なぜ無罰なのか

カート道の救済とは、人工物であるカート道がプレーの妨げになったとき、罰なしに球を移動できる権利のことです。コース管理上の人工物で不利を被らないための仕組みです。
救済の対象は「動かせない障害物」です
カート道は規則上「動かせない障害物」に分類されます。
舗装されたカート道のほか、次のものも同じ扱いで無罰の救済を受けられます。
- 排水溝のグレーチング(金属格子)
- スプリンクラーヘッド
- 距離表示杭、ヤーデージプレート
- カート道の縁石、人工の路肩
- 給水機やベンチ(動かせないもの)
一方で、次のものは対象外です。混同しやすいので注意してください。
- 自然の地面のくぼみ、木の根、砂利のない土の轍
- 境界を示すOB杭(コースの境界物のため救済なし)
- 樹木、切り株
OB杭は「境界物」なので、スイングの邪魔になっても救済は受けられません。抜くこともできません。カート道と同じ感覚で処置すると誤所からのプレーになります。
救済が認められる3つの妨害パターン
救済を受けられるのは、次のいずれかに当てはまるときです。
| 妨害の種類 | 具体的な状況 | 救済 |
|---|---|---|
| 球が触れている | 球が道の上、または道に接している | 受けられる |
| スタンスがかかる | 両足のどちらかが道に乗る | 受けられる |
| スイング区域にかかる | バックスイングやフォローで道に当たる | 受けられる |
| 目の錯覚・心理的な不快感 | 道が近くて気になるだけ | 受けられない |
| 打球線上にある | 道がグリーンとの間にあるだけ | 受けられない(パッティンググリーン以外) |
「気になる」だけでは救済されません。実際に球・スタンス・スイング区域のいずれかが物理的に干渉している必要があります。
スタンスがかかる場合の判定は「実際に構えて」行います
スタンスの干渉は、その状況で合理的に選択したクラブとスタンスで実際に構えて判定します。
たとえば残り150ヤードで7番アイアンを選ぶのが自然な場面で、「サンドウェッジで構えれば足が道に乗る」といった不自然な選択は認められません。
救済の可否は「球・スタンス・スイング区域が実際に道に干渉しているか」で決まります。心理的な障害は対象外です。
始める前の準備:必要なものと事前の心構え
救済処置に必要な道具はティー2本とクラブ1本だけです。事前に用意しておけば、処置は30秒ほどで終わります。
持っておくと処置が速い3点
- ティー2本以上:ニアレストポイントと救済エリアの端をマークします。マーカーやコインでも代用できます
- 一番長いクラブ(通常はドライバー):1クラブレングスの測定に使えます。パター以外で最も長いクラブが基準です
- スコアカードの裏または規則アプリ:判断に迷ったときの確認用です
1クラブレングスは「キャディバッグの中で最も長いクラブ(パターを除く)」で測ります。ドライバーを入れているなら、アイアンで測るより救済エリアが広くなり有利です。
事前に押さえておく2つの前提知識
その1:ドロップは膝の高さから
2019年の規則改正で、ドロップ位置は肩の高さから膝の高さに変わりました。まっすぐ立った状態の膝の高さから、球を落とすだけです。投げたり、回転をかけたり、転がしたりしてはいけません。
その2:救済は義務ではありません
救済を受けずに、道の上からそのまま打つこともできます。ただしクラブが傷つき、跳ね返りのリスクもあるため、通常は救済を受けることをおすすめします。
カート道の上から打った場合、クラブのソールが削れるほか、球が硬い路面で跳ねて想定外の方向へ飛ぶことがあります。特にウェッジのバウンスが弾かれてトップしやすくなります。
手順を順番に詳しく解説:ニアレストポイントの決め方
救済の成否はニアレストポイントの特定で決まります。ここを正確に行えば、あとは機械的な作業です。
ステップ1:球がある側を確認する
まず、球が道のどちら側にあるかを確認します。
ニアレストポイントは「元の球の位置に最も近い点」なので、球が道の右端寄りなら右側、左端寄りなら左側が候補になります。中央付近にある場合は、両側を比較して近いほうを選びます。
よくある誤解が「打ちやすい側を選べる」というものです。選べません。物理的に近いほうが自動的に基準になります。
ステップ2:クラブを持って実際に構えてみる
次に、その場面で使うクラブを持ち、道の外側で実際にアドレスします。
確認するのは3点です。
- 球を置く位置が道から外れているか
- 両足が道に乗っていないか
- バックスイング・フォローでクラブが道に触れないか
3点すべてクリアする位置のうち、元の球に最も近い点がニアレストポイントです。実際に構えて確認するのが最も確実です。
ステップ3:ホールに近づかないことを確認する
ニアレストポイントは、元の球の位置よりホールに近づいてはいけません。
判定は「ホールとの直線距離」で行います。横方向にずれても、ホールまでの距離が元の位置より短くなっていなければ問題ありません。
迷ったら、元の球の位置とホールを結んだ線をイメージし、その線に対して垂直な線より後ろ側にあるか確認します。
ステップ4:ティーでマークして1クラブレングスを測る
ニアレストポイントが決まったら、そこにティーを刺します。
そこから最長クラブ1本分(ドライバーなら約114cm)の範囲が救済エリアです。ただしホールに近づく方向は除外されます。つまり実質は半円形のエリアになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 基準点 | 完全な救済のニアレストポイント |
| 範囲 | 基準点から1クラブレングス以内 |
| 除外 | ホールに近づく側 |
| 測定クラブ | パター以外で最も長いクラブ |
| エリアの形 | 半円形(約114cm×半円) |
ステップ5:膝の高さからドロップする
救済エリア内に、膝の高さから球を落とします。
球が救済エリア内に落ち、エリア内に止まれば処置完了です。そのままプレーします。
エリア外に転がり出た場合は、もう一度ドロップします。2回目もエリア外に出たら、2回目のドロップで最初に地面に触れた地点にプレースします。
ドロップした球がエリア内に落ちても、転がってエリア外に出たらやり直しです。「落ちた場所」ではなく「止まった場所」で判定します。
つまずきやすいポイントと対処法
最も多いミスは「打ちやすい側にドロップしてしまう」ことです。誤所からのプレーとなり、一般の罰(ストロークプレーで2罰打)が科されます。
ミス1:有利な側を選んでしまう
症状:球が道の右寄りにあるのに、左側のほうがフェアウェイに近いので左にドロップした。
対処:ニアレストポイントは有利・不利で選べません。物理的に近い側が自動的に決まります。右利きの人が道の右側(右利きから見て体の右)にドロップすると、逆に木の下など悪い状況になることもありますが、それがルールです。
救済策:不利になるなら、救済を受けずに道の上から打つ選択もできます。
ミス2:スタンスだけ外して球はまだ道の近く
症状:足だけ道から外したが、バックスイングでクラブが道に触れる。
対処:「完全な救済」とは、球・スタンス・スイング区域のすべての干渉が無くなることです。一部でも残っていれば、その点はニアレストポイントではありません。
ミス3:ドロップが高すぎる・低すぎる
症状:肩の高さから落とした、または手を地面近くまで下ろして置くように落とした。
対処:正しくない方法でドロップした場合、その球をプレーする前なら訂正できます(無罰)。訂正せずに打つと1罰打です。まっすぐ立って腕を下ろした膝の高さを目安にしてください。
ミス4:カート道の「縁石」を見落とす
症状:道の本体からは外れたが、コンクリートの縁石にスタンスが乗っている。
対処:縁石もカート道と一体の障害物です。縁石からも完全に外れる位置がニアレストポイントになります。
つまずきの大半は「完全な救済」の理解不足が原因です。球・足・クラブの3つすべてが道から離れているか、必ず実際に構えて確認してください。
効率化・応用のコツ:3分ルールを守る進め方
救済処置は順番が来る前に準備すれば30秒で終わります。スロープレー防止にも直結します。
コツ1:待ち時間に基準点を目測しておく
同伴者が打っている間に、自分の球の位置と道の位置関係を確認しておきます。「たぶん右側、あの木のあたり」と当たりをつけておけば、自分の番ですぐ動けます。
コツ2:ニアレストポイントは「点」で考える
エリアで考えると迷います。「ここしかない」という1点を先に決めてから、そこから1クラブレングスの範囲を広げるのが速いです。
コツ3:判断に迷ったら2つの球でプレーする
ストロークプレーで処置に自信がないときは、規則20.1c(3)により2つの球でプレーできます。
- 元の状況で1球プレーする
- 救済を受けてもう1球プレーする
- どちらを採用したいかをその場で宣言する
- ホールアウト後、スコア提出前に委員会に報告する
競技での有効な手段です。報告を忘れると失格になるので注意してください。
コツ4:グリーン周りは「道の反対側」も検討する
グリーン脇のカート道では、ニアレストポイントが花道の反対側(ラフや斜面)になることがあります。
この場合、救済を受けると難しいライになるため、道の上からパターで転がすほうが結果的に良いこともあります。救済は権利であって義務ではないという原則を思い出してください。
ローカルルールで「カート道の砂利部分は救済なし」など独自規定を設けているコースもあります。スタート前にスコアカード裏の記載を確認する習慣をつけると安心です。
注意点・リスク:2罰打になるケース
最も重いリスクは誤所からのプレーによる2罰打(ストロークプレー)です。マッチプレーではそのホールの負けになります。
リスク1:誤所からのプレー
ニアレストポイントの決定を誤り、正しい救済エリア外から打つと2罰打です。
さらに「重大な違反」(本来より著しく有利な位置から打った場合)と判断されると、訂正しないままホールアウトすると失格になります。明らかに有利な位置にドロップしていないか、常に自問してください。
リスク2:ドロップの方法違反
膝の高さ以外からドロップして、そのまま打つと1罰打です。打つ前に気づけば無罰で訂正できます。
リスク3:バンカー内・ペナルティーエリア内の扱い
カート道の救済はジェネラルエリア(フェアウェイ・ラフ)が前提です。
- バンカー内:無罰の救済はバンカー内でのみ受けられます。バンカー外に出す場合は1罰打(後方線上の救済)
- ペナルティーエリア内:異常なコース状態の救済は受けられません。ペナルティーエリアの救済(1罰打)を選ぶか、そのまま打つかです
ペナルティーエリア内にカート道がかかっている場合、無罰の救済は受けられません。この誤りは意外に多いので覚えておいてください。
リスク4:救済後も干渉が残っている
ドロップした結果、まだスタンスが道にかかっているケースがあります。この場合は救済が完了していません。再度、正しいニアレストポイントから処置をやり直してください。
具体例・ケーススタディ:4つの典型シーン
実際のラウンドで遭遇しやすい4パターンを、判断の流れとともに見ていきます。
ケース1:球が道の中央に止まった(ミドルホール2打目)
状況:残り140ヤード、球はカート道のちょうど中央。道幅は約2.5メートル。
判断:球の位置から左右どちらの端が近いかを比較します。中央なので、どちらの側でもスタンス・スイングが完全に道を外れる点を両側で探し、元の球により近いほうを選びます。
結果:左側のほうが5cm近かったため左を選択。ティーでマークし、ドライバー1本分の範囲にドロップして無罰でプレー再開。
ケース2:球はラフ、右足だけ道に乗る
状況:球は道の脇のラフ。アドレスすると右足のかかとが道に乗ります。
判断:スタンスの干渉なので救済の対象です。球を道から遠ざける方向に、足が道から完全に外れる最も近い点を探します。
注意点:この場合、球は元々ラフにあるので、ニアレストポイントも当然ラフの中です。フェアウェイに出せるわけではありません。ライの改善にはならない点を理解しておいてください。
ケース3:救済を受けると木の下になる
状況:球は道の右端。ニアレストポイントは右側だが、そこは大きな木の真下でスイングできない。
判断:ルール上、救済を受けるならニアレストポイントは右側で確定です。木の下が嫌でも左側は選べません。
選択肢:
- そのまま道の上から打つ(無罰)
- 右側にドロップして木の下から低い球で脱出する
- アンプレヤブル宣言をする(1罰打、規則19)
実務では1か3が現実的です。救済を受けたら状況が悪化する典型例です。
ケース4:グリーン手前の道を越える打球線
状況:球はラフ、グリーンとの間にカート道が横切っている。
判断:救済は受けられません。打球線上に障害物があるだけでは、ジェネラルエリアでは救済の対象外です。
対処:道を越える弾道で打つか、道の手前に刻むかを選びます。硬い路面で球が跳ねることを想定し、道に落とすなら奥の距離感を計算に入れてください。
救済の判断は「干渉があるか」だけで決まり、「打ちやすくなるか」は無関係です。受けたほうが不利になる場面では、受けない選択も戦略の一つです。
よくある質問
カート道の救済に罰打はありますか?
罰打はありません。カート道は「動かせない障害物」にあたるため、規則16.1により無罰で救済を受けられます。ただし処置を誤って誤所からプレーすると、ストロークプレーで2罰打が科されます。
打ちやすいほうの側にドロップできますか?
できません。ニアレストポイントは元の球の位置に物理的に最も近い点で自動的に決まります。有利・不利で選ぶことは認められておらず、選ぶと誤所からのプレーになります。
1クラブレングスは何センチですか?
キャディバッグに入っている最も長いクラブ(パターを除く)の長さです。一般的なドライバーなら約114cm前後になります。アイアンではなくドライバーで測ることで、救済エリアを最大限に使えます。
ドロップした球が転がってエリアの外に出たらどうしますか?
もう一度ドロップします。2回目もエリア外に止まった場合は、2回目のドロップで球が最初に地面に触れた地点にプレースします。判定は「落ちた場所」ではなく「止まった場所」で行います。
救済を受けずに道の上から打ってもいいですか?
問題ありません。救済は権利であって義務ではないため、そのまま打つ選択も認められています。ただしクラブのソールが傷つき、硬い路面で球が跳ねてミスにつながりやすい点は覚悟しておいてください。
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カート道の救済は、「近いほうの側」で「完全に干渉が消える最も近い点」を決め、1クラブレングス以内に膝の高さからドロップする、これだけです。
次のラウンドでは、カート道に球が乗ったらまず実際に構えてみてください。頭の中で考えるより、体で確認するほうがはるかに速く正確です。




